2009年2月19日木曜日

中国/雲南自然エネルギーエコツアー2008に参加して【2】 〔主催〕:NGO REPP(自然エネルギー推進市民フォーラム) 仁井 明

〔嵩明県/イーチョン村のバイオガス設備〕



嵩明県/イーチョン村の畑。
典型的なラテライト地層であり、
痩せた土地である。

イーチョン村のある家庭のバイオガス設備。
手前がコンクリート製バイオガス設備。奥が最近設置したというGFRP製バイオガス設備。この村では、500軒中、70軒が設置しており、全て順調に機能しているとのこと。

バイオガスコンロ,炊飯器もある。
発酵槽からの距離は15m程度。
コンロ着圧は、3kPa(水頭圧換算:
30.6cmH2O)。
液肥により良く生育した野菜とトウモロコシ


(5)考 察
 一般に、メタン発酵菌が活発になり、バイオガスを発生させるに適した温度は、35℃付近(中温発酵)、55℃付近(高温発酵)とされている。しかし、雲南省は多くが高地であることもあって気温が低く、10℃の低温発酵を目標にしているとのこと。省都の昆明でも年間平均気温は15.0℃、麗江では12.6℃、香格里拉では9.9℃とされている。
これらの平均気温と表1.に示したバイオガス設置/稼動状況一覧を比較すると、麗江、香格里拉と、気温が低下するほどバイオガスが十分に発生していないことが分かる。
これらを考え合わせると、平均気温が15℃以上保持できないと、10℃の低温発酵温度を維持できないと推察できる。この点、麗江の12.6℃というのは、微妙な温度である。 
バイオガス設備に関しては、中国は3種類の国家標準図面を公開している(現在、4種類目の標準図面も追加されたとのこと)が、地域の気温差とその対策には全く触れられていない。10℃以下でも発酵できるような発酵促進剤の開発も行われていると聞くが、地域に合った構造(年間気温は何度か? 近くに地下水等があり、土壌が発酵槽から熱を奪う可能性はないか? 断熱材の活用検討等)の研究開発も最重要課題ではないかと考える。


3.所 感
 以下に、東ティモールでの経験をあわせ、今回の雲南省エコツアーで感じたことを纏めた。

(1)バイオガス政策
バイオガス政策については、東ティモール政府と共通するものを感じた。すなわち、沿海部等の近代都市では、火力発電、原子力発電。 山村部では、水力発電、バイオガス設備の推進。 ただ、電気については、中国では既に山村部まで供給されている感があり、供給困難地につては、太陽光発電で対応しようとしているようだ。一方、東ティモールは、炊事用だけでなく、発電も視野に入れている。両国における共通点は、
①バイオガスを炊事燃料(あるいは発電)として使い、薪用の木の伐採を抑制、森林を保護し、ひいては地球温暖化防止策に寄与する。
②液肥を十分に有効利用し、農産物の生産性を挙げる。ということに尽きる。 
これらは、国の規模は全く異なるものの、世界的なテーマとして共通するものである。

(2)バイオガス設備の規模
 中国では、6m3、8m3の設備の設置を各家庭単位で進めている。一方、東ティモールでは、数十m3;、数百m3といった大規模なものを集落単位で設置している。ただ、これは東ティモールという、未だ族長社会的な文化を残し村単位の共同体意識が育っていない国においては、近代教育の遅れもあって、設置後十二分に運用管理できるかどうかは未知数である。現在、中国にも数十m3規模の大型バイオガス設備を設置する計画があるとのことであるが、進め方としては、より納得できるものである。

(3)研究開発、教育の推進
 中国では、多くの大学も技術開発に参加しており、その潜在的な能力を駆使すれば、研究開発が大いに進むのではないだろうか。一方、東ティモールにおいては、研究開発分野は多分に海外のNGOに頼っている感がある。自国での専門家、研究者の育成、分析機関、農業試験場等の体制整備作りが必要であろう。
 教育についても、中国では既に小学校の段階からバイオガスの教育、普及教育が取り入れられている。この点、東ティモールでは、諸外国のNGOあるいは自国のNGOが一般住民の普及教育を2003年から進めている段階である。学校教育にも取り入れることが望まれる。

(4)その他の自然エネルギー活用状況
本報告では、バイオガスを主眼に報告したが、先に、2.項 (2)で述べたように、中国では、バイオガス設備費を政府が半額補助する条件として、太陽熱温水器設置,トイレ改造が義務付けられている。
このような政策を背景として、バイオガスを設置している農家のみならず都市部においても、太陽熱温水器や太陽光発電が普及しているのを目の当たりにした。 また、電動オートバイの普及が進んでおり、“日本では排気ガスが臭く、騒音が大きいのが当たり前” であるオートバイが無音で無数に走っているのを目にしたのは新鮮な驚きで、“何故無音なのか?”、一瞬理解できなったほどである。 これらも簡単に下記に紹介する。




麗江から大里へ向かう高速道路の街路灯
--- 太陽光発電利用

昆明市内ビル屋上の太陽光発電
安寧市 村の小さな小学校の台所に設置された太陽熱温水器

昆明市内。集合住宅屋上に所狭し
と設置されている太陽熱温水器。

昆明市内。バイク専用レーンがあり、
多くの無音のバイクが疾走している。


(5)東ティモールにおけるバイオガス推進の優位性
 東ティモールのメリットは、なんといっても、同国がほぼ赤道近くにあるということである。 バイオガスの発生量は、発酵槽単位容積あたり数倍から10倍に及ぶ感がある。これは同国にとっては大きなメリットであり、大きな期待が持てる。

(6)日本の現状
 日本では、山村の隅々まで電気、プロパンガスが供給されている。また、農業自給率も39%と減少の一途を辿り、これを高めようという機運も感じられず、限界集落が増え続けているのが現状である。 このような状況の中、農業に携わる人々の中でバイオガスや有機農業に意識を持って取り組む人はごくわずかである。企業レベルでの産廃処理施設、下水処理場、食品工場、畜産農家などと需要家をネットワーク化する取り組みも始まったばかりである。中国の環境汚染問題がしばしば報道される。しかし、私にとっては、農業分野での循環型社会への取り組みは、教育や社会への啓蒙を含め、むしろ日本は中国には遠く及ばない後進国ではないかという危惧の念を持ったエコツアーでもあった。
以上

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